思川流域のいにしえを訪ねる(1)

下野国庁跡と大神(おおみわ)神社

下野国庁跡

 思川流域は古くから下野国の政治の中心地として栄えた。その名残は下野国庁跡として、思川西岸の栃木市国府地区に残されている。今では一面、田んぼの中に再建された前殿と両側にあった脇殿の礎石が残っている。奈良時代に建てられた下野国府は東西500メートル南北1キロに渡る、広大な規模を有していたが、平安時代の平将門によって襲撃(平将門の乱)され、武家社会の到来とともにその役目を終えた。

資料館

 北側には資料館があり、出土品や当時の配置図などが展示されている。
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大神神社 みずとり場

 下野国庁跡から北に数キロ行くと下野惣社の大神神社がある。大神神社は奈良の大三輪神社の分霊を奉祀し、1800年前に創建された神社である。神社は”室の八島”として、いにしえの昔より有名で多くの歌人に歌われている。八島を取り囲む清らかな水は、社務所脇の湧水から流れる。大きな石の中から大量の水が湧き出し、その周りには彩り豊かな錦鯉が悠然と泳いでいる。

室の八島

 室の八島は八つの島とそれをとりまく清流からなり、橋で島づたいに渡れる。流れの中に何となく配置された石やシダ、苔が悠久の流れを感じる。室の八島は平安時代の歌枕として知られ、恋の歌が多い。

煙たつ 室のやしまにあらぬ身は   こがれしことぞ くやしかりける

     大江  匡房

芭蕉句碑

 松尾芭蕉は1689年、奥の細道の途中で室の八島によって俳句を残している。

室の八島の出口の鳥居脇に句碑が残っている。

糸遊に 結びつけたる けぶりかな

      松尾芭蕉


水琴窟

 八島の脇では水琴窟がたとえようも無い透明な音を奏でる。水琴窟は地下に埋められた大きな瓶の中に水滴が滴り落ち、底にたまった水に落ちる音が瓶の中で共鳴し澄んだ音を発生する。その絶妙なタイミングと音色は飽きることが無い。外からも聞こえるが、穴に差し込まれた竹筒を通して聞けば、自然の奏でる音楽に時間を忘れる。

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